『ダンスをめぐる12の文章』

 以前からインターネット上で読めるダンス関連の日本語テクストがあまりに少ないと感じていました。ダンスについて、語り、考えるためのヒントになればと思い、12人の方々にダンスをめぐるエッセイの執筆、または児玉との往復書簡を依頼しました。

 ダンサー・研究者・振付家・制作者など、様々な立場で、そして多くはそれらの立場を横断しながらダンスと関わっている方々が、沢山のトピックを論じて下さいました。始めた当初は本当にささやかな試みを想定していましたが、予想を遥かに超えて密度の高い内容となり、この様にアクセシブルな形でこれらの文章を公開できたことをとても嬉しく思っております。一つの場に集まったことで、それぞれの文章の間のつながりも沢山見えてくるのではないかと思っています。

 ここで示された幅広いトピックは、いわゆる芸術の世界の内部にとどまりません。ダンスにおける労働の問題、作品を作る上で働く力学、日本という場所でコンテンポラリー・ダンスに関わるということ、ダンスを通して世界の見方を変える可能性、そしてダンサーになるということはいかなることなのか・・・。それらは芸術の問題、ダンスの問題でもあると同時に、人間社会が抱えている根本的な問題を如実に反映したものでもあります。それゆえ、多くの人々がダンスと生活の間で板挟みのように体感してきた問題であり、なかなか話すことが難しかったトピックなのではないかと思います。

 ダンスを通してこれらの問題にアクセスすることは、決して無駄なことではありません。読み、話し、書き、つくり、おどるという事を絡み合わせながら、ゆっくり時間をかけて思考し、行動すること。それはこれからの世界を拓くための別の仕方、一つのオルタナティブなのです。この企画には少し難しい文章も含まれていますが、あくまでも幅広い方々へ向けて書かれたものです。『ダンスをめぐる12の文章』というささやかな企てが、きっかけとして、いつか誰かの役に立てばいいなと思っています。

2020年12月 児玉北斗


1. 吉田駿太朗+児玉北斗

「ポスト・コレオグラフィーをめぐる往復書簡 1」(2020/9/20 up)

「ポスト・コレオグラフィーをめぐる往復書簡 2」(2020/11/7 up)

「ポスト・コレオグラフィーをめぐる往復書簡 3」(2020/12/29 up)

2. 越智雄磨

「ダンスの(反)近代 1」(2020/10/1 up)

「ダンスの(反)近代 2」(2020/11/14 up)

「ダンスの(反)近代 3」(2020/12/31 up)

3. 梅田宏明

「身体に立ち現れるものとは」(2020/10/11 up)

4. 木村玲奈

「〈ダンス〉と『作品』について」(2020/10/22 up)

5. 奥野美和

「独自の身体メソッドの構築と背景」(2020/10/25 up)

6. 林慶一

「日本・現代・舞踊」(2020/10/28 up)

7. 岡元ひかる

「空を箸で摘まむこと 土方巽とその弟子の舞踏について」(2020/11/2 up)

8. 中島那奈子

「踊らないことが出来ること」(2020/11/9 up)

9. 古川友紀

「川に沿って歩く」(2020/11/18 up)

10. 白井愛咲

「働かなくても踊っていいですか」(2020/11/21 up)

11. 敷地理

「オブジェクトと身体」(2020/11/24 up)

12. タナポン・ウィルンハグン

「異教徒的な民主主義肯定者たちと、そのバンコクの路上におけるダンスの実践」(2020/12/15 up)


*本事業は「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う京都市⽂化芸術活動緊急奨励⾦」の採択事業です。